野里町歩紀

月1回のペースで大阪近郊の「野」「里」「町」を歩きます。そして合間にちょっと気になったことや世情について思いつくままつぶやきます。ただ論争は好みません。

映画「砂の器」

 私が好きな邦画の一つです。松本清張の原作と映画では細かい所で違いがあります。それと後に制作されたテレビドラマとも。この映画の主題は何でしょうか。この映画も何度も見なければ理解できません(少なくとも私は)。私は10回以上観たでしょうか。劇中曲にもあるように父と子の出会いは「運命」ではなく「宿命」ということでしょうか。

 

 ただ私がこの映画を観ようと思ったきっかけは、当時ラジオ大阪で流れていた「バチョンと行こう」。浜村淳さんが担当曜日に蒸気機関車の汽笛とニニロッソの夜空のトランペットに続いて始まる「思い出は映画とともに」。当時流行ったブルースリー主演の「燃えよドラゴン」を浜村淳さんの「アチョ~、ハッ、ハッ、アチャ~」と臨場感あふれる解説。そんな中で「砂の器」を解説されており何度も流れる「和賀英良」「和賀英良」という浜村さんの声に興味を抱きました。しかし私は映画評論家ではありません。映画は自分の目で観るものです。自分の感性や経験、生い立ちなどを元に自由に観れば良いと思います(別に映画評論家を否定するものではないので誤解のないように)。

 私がこの映画が好きな理由は大きく2つです。ひとつは犯人を求め日本各地を回る今西刑事(丹波哲郎)。その後、父子の絆を元に巡礼姿で全国を巡る本浦千代吉(加藤嘉)と息子秀夫。その背景である「日本の原風景」と一世代昔の「レトロな東京」です。

 そして二つ目は「父」と「息子」の絆です。放浪の旅に出た父子は離れ離れになり保護された駐在所から逃走した秀夫。それを追う駐在巡査三木謙一(緒形拳)から逃れようとする秀夫の野性的な目つきはすごい演技力だと思います。父親との「宿命」を守るため涙ながらに三木巡査との「運命」を断ち切ろうとする幼い少年。ただ個人的には浮浪児である秀夫を演じた子役(春日さんスミマセン)は「イケメン」過ぎたかな…。しかし哀れな老人役(劇中では老人ではありませんが)を演じれば天下一品の加藤嘉さんの名演技。私は娘しかいないので男の子を育てた経験はないのですが、おそらく男の子を持つ父親の感情とはああいうものなのでしょうか。千代吉が秀夫を守る姿「涙ボロボロ」です。娘とはまた違った感性で父は息子を守るのでしょうね。

 動物の「メス」は命を懸けて子どもを守りますが「オス」は知らんぷり。「父」が「息子」を守る姿。これがこの映画の主題なのでしょうか。